地域が自らの手でより良い未来を切り開いていくために
必要となるサービスキーワードは
「空間情報」「マネジメント」であると私たちは考えます。

空間情報とマネジメント

企業の目的はお客の創造と説き、利益はその目的を達成するための条件としたドラッカーの言葉は、人や社会に対する愛情に溢れ、人々が幸せに暮らす社会とはどういうものか、そのために企業には何が求められているのか問いかけてきます。

また、「マネジメント(エッセンシャル版)」の冒頭では、マネジメントの役割を、①自らの組織に特有の使命を果たす、②仕事を通じて働く人たちを生かす、③自らの組織が社会に与える影響を処理すると共に、社会の問題解決に貢献する、と説きました。

※2009年12月出版されたもしドラ(「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら」)が一大ブームとなり、ビジネスマンのみならず中学、高校の生徒会やクラブ活動、大学のサークルまでもがドラッカーのマネジメントを学び、活用することが社会的な話題となりました。

2011年3月11日東日本大震災。国内外からの応援を受け、国を挙げての復興が開始されました。100年先を見据えた国づくりが始まり、同時に政府、地方自治体、地域、企業がパートナシップを形成し、公民連携(PPP:パブリック・プライベート・パートナシップ)や民間資金を活用した公共サービスの実現(PFI:プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ)の取り組みが本格化する機会でもありました。

私たちは、国及び地方行政とその向こうに存在する新の顧客というべき住民に如何なるサービスを提供すべきか再考する必要性に迫られてきました。地域が自らの手でより良い未来を切り開いていくために必要とするサービス、そのキーワードの一つが「空間情報」と「マネジメント」とであると考えます。

空間情報とマネジメントを基軸とする「地域経営の全体最適」を目指したビジネスモデルを核として、地域企業が習得すべきスキル、マネジメント能力、全国企業が担うべき役割等、これらのことに対する強い動機付けが地域を支える鍵となります。空間情報とそれを取り巻く技術を、マネジメントを通じて新の顧客創造に役立てる責務があると考えています。

讃岐の未来風景

事業スキームを形成していく上での法整備や技術的な課題、運用上の問題など、実現に向けて解決すべきテーマは数多くあり、幾つものハードルを越えていかなければならないが、このことが実現したと想定して、「讃岐の未来」について思いを馳せてみた。

その昔、公共地図を扱う一つの小さな官民連携事業が立ち上がった。人々は地図というキャンバスの上で未来を語り、夢を描き始めた。そのキャンバスから未来への波紋が広がり世代を超えて受け継がれた。官民連携は高度化し、住民は政策決定にも参画するようになった。人々が地域経営を支える主人公となった。そのような未来の讃岐をご紹介しよう。

讃岐平野では、都市機能がコンパクトに集積され、市街地や学校区を単位とするコミュニティが、それぞれの個性を発揮しながらも州都高松と緩やかに連携し役割分担している。それらの周辺部には、昔ながらの鎮守の森や再編された農地が広がり、山間部にかけては手入れの行き届いた里山が、調和したふるさと的な景観を生み出した。そして豊かな自然が復活した。瀬戸内の穏やかな気候と、流域的に独立しているという地形的優位性を活かし、先人たちが戦略的に進めてきたスマート農業が世界的なブランドとなった。土、動植物と触れ合う農業の魅力に惹かれ全国から若者の転入が後を絶たず、海外から家族を引き連れての永住者も相当数に上っている。里山が豊かになり、清流が蘇ることによって海も豊かさを増し、瀬戸内の漁業もまた讃岐を代表する一大ブランドとなった。農業、漁業のみならず、多くの地場産業が包括的なサービスとして連携し、収益性の高い魅力的なビジネスとなった。世界文化遺産となった四国八十八箇所めぐりは、古(いにしえ)の文化と豊かな自然に触れ合う旅として人気を博し、とりわけ世界中の自転車を愛する人々を夢中にさせた。弘法大師生誕の地に近く、いつしか旅の拠点となった荘内半島は、風光明媚な瀬戸内の多島景観と相まって自転車愛好家の聖地として世界中にその名を馳せた。

瀬戸大橋記念公園跡地に整備されたアジアを代表するビッグモール(図)は、この地の物産やサービスに直接触れ親しみ、継続的なサービス契約等を取り交わす新たなショッピングのモデルとなった。

世界的イベントとなった瀬戸内国際芸術祭と同様に、ここは海外からの旅人が必ずといっていいほど立ち寄るハブとなり、ここを拠点に瀬戸の島々、讃岐、四国をめぐる観光は、長期滞在型へと変貌を遂げた。旅人一人当たりの滞在日数は世界一となり、朝夕の陽光に映える瀬戸大橋は、世界への架け橋としてそのシンボルとなった。

※図:瀬戸大橋記念公園跡地のショッピングモール
(友人H.N氏のご協力による)

四国の「おせったいの心」は、多くの旅人に忘れかけていた共感と感動を提供し、「おせったい」は、「もったいない」と同様に世界共通語にもなった。

人々の生活を支えるエネルギー、交通などの社会インフラやICT を始めとするテクノロジーの高度化とは裏腹に、経済論理や科学技術に追い立てられる時代が過ぎ去り、21 世紀の初頭に比べて時間の流れは遥かに緩やかに、かつ豊かになった。

そこに住み、または集う人々はいつも微笑みを湛え、「おせったい」の地「讃岐」は世界中の誰もが憧れる「成熟社会」の代名詞となった。そして「少子化・高齢化」は過去の言葉となった。